総合型選抜が1年で28%増。共通テストなしで国立大を狙う時代へ

2026年度入試において、共通テストを課さない総合型選抜の実施大学・学部数が急拡大した。

わずか1年で大学数は約28%増、学部数は約29%増。入試制度としては異例のスピードの変化だ。

この変化は受験生と保護者に何をもたらすのか。愛媛県松山市で総合型選抜専門塾「パスハック」を運営する長岡が、ニュースの背景と現場からの示唆を語る。

目次

入試の地図が、静かに塗り替えられている

数字で見る変化

前年の116大学・410学部から149大学・530学部へ。共通テストを課さない総合型選抜の実施規模が、2026年度入試でこれほど大きく広がった。

総合型選抜とは、学力試験の点数だけでなく、志望理由書・小論文・面接・活動実績などを通じて「人物・意欲・適性」を総合的に評価する入試方式。旧称はAO入試だ。かつては私立大学が中心だったが、近年は国立大学でも本格的に広がりを見せている。

▶ 参考:入試・教育トピックス|河合塾 Kei-Net

なぜ今、これほど広がっているのか

この拡大を後押しする要因は主に3つある。

① 理工系・情報系における「女子枠」の新設・拡大
東京科学大学・京都大学・名古屋大学といった難関国立大を含む多くの大学が、女子のみを対象とした特別枠を総合型選抜の中に新設。理工系の女性比率の低さという長年の課題への対応が、学部数増加を押し上げている。

② 年内の学科試験が正式解禁(2026年度入試から)
文部科学省は2026年度入試から、小論文・面接・実技などと組み合わせることを条件に、2月1日より前の学科試験実施を正式に容認。大学が年内に多様な選抜を設けやすい環境が整いつつある。

③ 2027年度からの「面接必須化」
文部科学省は2027年度入試から、総合型選抜および公募制の学校推薦型選抜で面接を必須とすることを決定。各大学の選抜方式の見直しが加速している。

▶ 参考:2027年度入試から公募型年内入試で面接必須に|河合塾 Kei-Net

実際にどの国立大学が対象なのか

「国立大学を共通テストなしで受けられるわけがない」そう思っている受験生・保護者は多い。しかし実態は異なる。以下は共通テストを課さない総合型選抜を実施している主な国立大学の例だ。

大学名選抜方式の概要入試情報ページ
東北大学AO入試Ⅱ期(共通テストを課さない)を全学部で実施東北大学 AO入試
筑波大学アドミッションセンター入試(共通テスト不要)筑波大学 入試情報サイト
九州大学総合型選抜Ⅰ(共創学部・教育学部、共通テストを課さない)九州大学 総合型選抜Ⅰ
岡山大学総合型選抜(一部学部で共通テスト不要の方式あり)岡山大学 総合型選抜募集要項
名古屋大学総合型選抜(一部学部で共通テスト不要の方式あり)駿台 総合型選抜一覧2026

※方式・募集人員は年度・学部によって異なる。必ず各大学の公式募集要項を確認のこと。

同じ大学・学部内でも「共通テストを課す方式」と「課さない方式」が並存しているケースが多い。扉は確かに増えている。だが、どの扉かを見極めることが重要だ。

大学が本当に求めているのは、「考えられる人間」だ

学力だけでは選ばれない時代へ

この変化の本質は何か。私はこう思っている。

大学側も、ただ勉強ができるだけの生徒を欲しいと思わなくなっている。いかに自分で考えて、やりたいことを見つけ、探求できるか。今回の数字は、大学がそこを重視し始めている流れの象徴だ。

では「自分で考えて、やりたいことを見つける力」は、どんな高校生でも持てるものなのか。正直、自然にできる高校生は少ないと思っている。

総合型選抜は「自己理解」の入試だ

高校生から大学生になるとき、人は半分、社会に足を踏み入れる。「何が得意か、人より何ができるか、自分はどんな人間か。」そういった自己理解なしに、「したいこと」は見えてこない。

だから私は、総合型選抜を「自己理解への第一歩となる入試」だと位置づけている。入試という機会を使って、自己探求をする。それがこの入試の本質だと思っている。

「なぜ?」を掘り下げると、自分の言葉が生まれる

総合型選抜で戦うにはまだ足りない

生徒の多くは、最初こう言う。「○○大学に行きたい」「東京の大学に行きたい」「国立大学に行きたい」と。

総合型選抜で戦うにはまだ足りない。

別にネームバリューで選ぶこと自体は悪くない。でも、その理由を説明できる人はほとんどいない。「なぜ都会の大学に行きたいの?」「大企業に入れるから」「なぜ大企業に入りたいの?」「お金持ちになれるから」こう問い続けると、誰も答えられなくなる。

しかしここをしつこく追いかけることで、自分の考えが整理されてどんどん明確化されていく。「なぜ」を掘り下げる作業こそが、自分だけの志望理由を生み出す源泉だ思う。

些細な日常の中に、原石が眠っている

私が大切にしていることがもう一つある。生徒が自分の些細な日常の経験に気づいていないという問題だ。

たとえば「旅行で空港に行ったとき、なんかテンションが上がった」という記憶。本人にとっては「ただそれだけ」だが、「なぜ高ぶったんだろう?」と掘り下げると、その子が本当に大切にしている価値観が見えてくる。「ただこれがしたい」という抽象的な言葉が、「〇〇するためにこれがしたい」という具体的な言葉に変わる。

その瞬間を、私は「変わった」と感じる瞬間だと思っている。

私自身も、その道を歩んできた

空港への原体験

この「空港の話」は、私自身の原体験でもある。学生時代、家族旅行でよく飛行機に乗っていた。そのうち空港という場所に魅了されていった。「別れもあり、出会いもあり、ワクワクもあり、余韻に浸る場でもある。」

その人の様々な顔の一端を担える仕事がしたいと思い、航空業界を目指した。

コロナ、挫折、そして気づき

しかしコロナ禍が直撃した。航空業界は大打撃を受け、志望していた航空大学の入試は延期が続いた。実力不足もあったが、2回チャレンジして届かなかった。空港への想いは本物だった。

でも、「航空業界でないといけない理由」「自分ってどんな人間?」「自分の得意なことは?」まで言語化できていなかった。だから夢が断たれたとき、別の形で実現する道を自分で見つけられず、足元が崩れてしまった。

その後は、夢とか意志ではなく、生活のためにIT・マーケティングの業界に飛び込んだ。いつまでも親の脛を齧っているわけにはいかない。考える暇もなくがむしゃらに働いた。

2年が経ったころ、ふと気づいた。

「このお客さんはこの商品を見てどう思うんだろう」「どうすれば目に留まるんだろう」相手の立場に立って俯瞰して考えることが、自分は好きで得意なんだと。

それに加えて、学生時代から塾やフリースクールで教えることが好きだったこと、インターン生のマネジメントが楽しかったことも思い出した。

「俯瞰して見る力」と「楽しく教える力」この2つが自分の中にあると気づいたとき、点が線になった感覚があった。それが今の仕事につながっている。

「盛る」のではなく、「深める」

恋愛でも友人関係でも、人はよく見せようとする。その行動自体は悪くない。

でも、自分の潜在的な経験・体験・考え・思いに気づけている人は、何をしてもぶれない。うまくいかないことがあっても、また立ち上がれる。

こうした経験から生まれたのが、パスハックの核心にある言葉「盛る対策はしない。深める対策をする。」だ。

表面を飾っても、面接官にはすぐ見抜かれる。自分の内側を徹底的に掘り下げて、自分の言葉で語れるようになること。

それが合格を引き寄せる力であり、大学に入ってからも、社会に出てからも通用する力だと私は信じている。

使えるチケットは、全部使え

「勉強しなくていい」は大きな誤解

選択肢が増えたことは喜ばしい。しかし一つの危うさを感じている。

「勉強しなくていい、好きなことだけで大学に行けるんだ」という捉え方だ。

私自身も科目を絞っていた身なので大きな口は叩けないが、今の仕事をしていて国語をもっと勉強しておけばよかったと感じることがある。

学びに無駄なものはない。自分の考え方次第で、点であるものはいくらでも線にできる。総合型選抜は「勉強しなくていいルート」ではなく、「自分の経験と学びをつなげて語れる人間を選ぶ入試」だ。

迷っているあなたへ

総合型選抜を、選択肢の一つとして持ってほしい。それだけだ。

「周りより先に志望校が決まって、抜け道を使ったみたいに思われないかな」「一般に向き合えない人が逃げるものでしょ、と思われないかな」そんな周囲の目線が気になる子もいるだろう。

でも、そんなのは気にしなくていい。

行きたい大学があって、学びたい分野があって、進みたい未来がある。それに向かうために、使えるチケットは全部使った方がいい。

総合型選抜も、その一枚だ。

どの道を選ぶかではなく、選んだ道をどう正解にするか。

それだけを考えてほしい。

監修者

塾講師・フリースクール講師としてキャリアをスタート後、 ITベンチャーや上場企業でWebマーケティングを経験。 サイト運用から広告ディレクションまで幅広く担当。

IT寺子屋では小学生へのプログラミング指導に携わる。 現在は愛媛県松山市にて総合型選抜専門塾「パスハック」 を運営。自らも総合型選抜で電気通信大学に合格した実績を持つ。

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